2019年3月19日 「味噌にブーム到来 ・ 日本でも海外でも」
ひかり味噌㈱ 代表取締役社長 林 善博さん |
味噌汁の健康特集が組まれたり、海外でも注目され、にわかにブームが到来している味噌。
これまで35年にわたり無添加、オーガニックの味噌を製造販売してきたひかり味噌は時代の先達と言える。ひかり味噌株式会社代表取締役社長 林善博さんに最近の味噌事情をお話しいただいた。
味噌からMISOへ
「今や味噌は海外で英訳しなくても、MISOとして説明不要なほど知られる存在」
と林さんは言う。和食の世界的進出に伴い、味噌も枝豆・EDAMAME、和牛・WAGYU、黒豚・KUROBUTA、椎茸・SHIITAKE等と並び、パッケージに漢字で書かれると“カッコイイ”日本の食材のひとつだそうである。主にバーベキューソースやドレッシングの材料に使われる。
林さんは長野県諏訪で1936年創業のマルニ味噌(1967年からひかり味噌株式会社)の四代目に生まれたが当初は家業を継ぐ気がなく、大学卒業後はEPSONに就職して12年間海外営業を中心とする生活を送った。その実績が現在の味噌の海外進出に大きく関わっていると言えるだろう。
味噌業界では昭和11年創業は新参者だった。それもあって、ひかり味噌は新しいものにチャレンジする企業風土があった。スーパーのPB(プライベートブランド)を請け負うと
いう販売革新や環境対策、早期の様々な認証取得(ISO14001,
9001,BRC,KOSHER,HALAL )など、特に有機認証(USDA,JAS,EU)は今、海外進出の大きな切り札になっている。
世界に誇る健康食、味噌は中途半端なもの
和食が健康的であることは広く知られているが、味噌はとかく塩分を指摘される。しかし、具沢山の味噌汁であれば、野菜のカリウムと味噌ののナトリウムが結合して体外に排出され野菜も多く摂れて一石二鳥。一日3回は多すぎても1回の“食べる味噌汁”は間違いなく健康食で、味噌汁消費の高い地域は長寿というデーターもある。昔の話だが、タバコを吸うキセルについたヤニを落とすために味噌汁に浸けたとか。
そもそも味噌は中途半端なものである、という。それは煮豆や納豆という個体における大豆のたんぱく質が塩と麹を加えることで発酵し、どんどん分解し、最後はアミノ酸だけの醤油という液体になる。その途中で半固形、ペースト状なのが味噌。タンクの一番下のたまり状が一番美味で、一番上部はまずくて捨てざるを得ない、完全に均一な味噌の味をつくることはできない、というように味噌づくりはかなりまだアバウトなものだそうである。しかし、その中途半端な発酵途上にペプチドが出現し、ペプチドが関与しているといわれる効能には
味噌は腐らない
臨床試験をしていないので、効能として記載はできないが、工場で味噌を毎日触っている人の手がすべすべだったり、傷口に味噌をつけると治りが早かったり、林さんの体験では登山の時、生肉に味噌をつけて炎天下1日持ち歩いても肉は腐ってなかった。殺菌作用があるのは間違いなく、味噌自体腐ることはない。仙台味噌も古くから知られるが、伊達政宗の戦国時代、武士の甲冑に味噌を塗りつけさせて、戦場でたんぱく質源の保存食として使ったという。
世界に誇る健康食である味噌が残念ながら過去20年、一年に1%弱のマイナス成長。
日本全国で1000社ほどの味噌メーカー全部合わせても40万トン、1100億円の生産高ということは、カルビーやハウスが1メーカーでおそらく3000億円、に比べると規模が知れる。一家族が750gのパック1個を1か月で使い切ってない、と推定できる。
ましてや有機味噌は40万トンの味噌のうち3500トンに過ぎず、その7割をひかり味噌がつくっている。
日本は有機食品がなかなか普及しないという現状がある。アメリカ、ヨーロッパの3%に対し0.3%と先進国にしては極めて低い。有機でなくても日本の食品は安全という考え、同じ味でも1.5倍の金額などが理由だろう。
味噌の強みは主原料が大豆ということ
味噌の消費が伸びないと言っても、即席味噌汁は500~600億円市場、ひかり味噌でも年間5憶食売れている。単価が低いということもあるが、日本人には慣れ親しんだ味、そして、和食の国際化で海外が成長市場である。
味噌の主原料は大豆。大豆はやせた土地でも育ち、気候変動に強く、厚い鞘に包まれているので農薬の害も少ない。今、徐々に世界中で作付面積が増えている。新聞などに、いずれ遺伝子組み換え大豆しか残らない、など書かれているが、それはないだろう、と林さんは断言する。世界の大豆の97%は油を搾るためか家畜の餌だった。3%を豆腐、納豆、豆乳、味噌などアジア人だけが食用としてきた。それが世界に広がりつつあり、上質な大豆が高くても売れるようになれば作り手も増える。
大豆は緯度が高いほど良いものができるので、ひかり味噌の有機大豆もロシアに近い中国北部で、会社の管理の下栽培している。甘くてなめらかで味の良い有機大豆こそが優れた有機味噌をつくりだすことができる。
さすが味噌業界の希望の“ひかり”ですね。