2018年2018年10月16日 出前講座
「食の源流を感じて ~東京の尼寺、三光院の精進料理~」        

                      三光院 西井香春さん 

 

 麗らかな秋の一日、食材の寺子屋の出前講座は、東京郊外、小金井市にある尼寺、臨済宗 泰元山 三光院にて、旬の精進料理を楽しみました。

 三光院は京都・嵯峨野の「曇華院(どんけいん)」、通称「竹之御所」とも呼ばれ親しまれている禅宗の尼門跡寺院に由来し、独特の精進料理を武蔵野の地に伝えている寺として知られています。

皇族や公家の女性達が守ってきた門跡寺院だけに、三光院の精進料理は室町時代から御所料理の流れを受け継ぎ、宮中の雅と禅の心が一体となった料理として600点余にわたり大切に守られてきました。関東の三光院でもその流れをくみ、季節の味わいを生かした精進料理は寺の修業の一環でもあり、また、一般の方々へも提供されています。 

 現在、三光院の精進料理を守っているのは西井香春さん。かつて「西井 郁(あや)」というお名前で、フランス家庭料理研究家としてテレビや女性誌で活躍なさっていた方です。16歳で渡仏し家庭料理や製菓を学び、帰国後は料理教室やワイン会など「ポトフ・サロン」を主宰。NHK「きょうの料理」にレギュラー出演したり、フランス料理やハーブの本も多数執筆したいたので、出前講座に参加の会員でご存じの方もいらっしゃいました。1993年に日本料理の原点を極めるために三光院のご住職、香栄尼に師事し、今日に至っています


 


      


講座では中村靖彦代表理事のご挨拶のあと、西井香春さんが三光院の精進料理について講話。簡素ながら気品ある華やかさをまとっているのが、門跡寺である三光院の精進料理の特長であること、旬の食材の風味を最大限に生かすことが一番大切であることなど、精進料理の歴史とともに語ってくれました。

 お話をうかがいながら始まったお食事。この日は「十月 神無月 雪の餐」とする、一汁七菜のコース料理です。献立をご紹介すると

 抹茶と三光院の笹竜胆紋最中お煮しめ(大和芋の海苔巻き、高野豆腐の含め煮、牛蒡の胡麻和え、南瓜の
 煮物)、ごま豆腐、里芋のあんかけ、香栄とう富
(豆腐の燻製)、 木枯らし(茄子の田楽)、粟麩のおでん、

にゃくてん(こんにゃくの天ぷら)、 一口吸い物大黒のおばん(黒豆のご飯おばんは御所言葉でご飯の
 こと)、香のもの、 竹の御所流伝統のすすり茶

どれも味わい深いお料理で、シンプルな料理法ながら工夫されて奥深く、美味な皿が続きました。香春さんはお料理の説明や作り方も丁寧に話され、熱心にメモする会員も。最後のお茶をいただく頃にはすっかりお腹も満たされ、精進料理の魅力を堪能することができました。

 禅の心がいきづいた三光院の精進料理…。今日の日本の「和食」は懐石料理、会席料理、本膳料理などのさまざまな歴史、そして、精進料理の伝統のうえに成り立っているのだという思いを新たにした一日でした。


西門ますみ(会員)