中村靖彦コーナー
「美味しいコメ ・ 競争は良いけれど」                      2019年3月10日

皆さんの朝食はごはんですか?パンなどの洋食でしょうか。今回はお米の話をしようと思います。最近とみに盛んになった美味しい米の競争についてです。

 日本穀物検定協会という組織があります。この団体が毎年米の産地と品種の食味
ランキングを発表しています。
2018年産の米について、先月の末、227日にこの
ランキングが発表されました。

 これによりますと、最高の評価である「特A」に格付けされた産地品種銘柄は、前の年に比べて12多い55となりました。この数は過去最高です。審査を希望したのは154銘柄でしたが、このうちおよそ
分の1が特Aということになりました。この頃はどの産地も、品種開発を競争で行っていて、魅力的で人目をひく名前をつけて売り込みをはかっています。今回のランキングで注目された新品種には、山形県村山、最上地区の「雪若丸」とか、徳島県の北部地区の「あきさかり」などがあります。昔から、美味しい米として知られている新潟県魚沼地区の「コシヒカリ」は、去年のランキングで「特A」から普通のAに一ランク格下げとなりましたが、今回また返り咲きとなっています。

 ところで、この食味ランキングは、どのようにして決められるのでしょうか。日本には、この穀物検定協会の他にいくつかコンテストがあります。

やり方は似ています。審査の数が多いので、最初は機械を使って、一定の条件に合った米を選び出します。ある程度数を絞った上で、実際に専門家に食べてもらって食味を判定してもらいます。この場合、炊き方が完全に同じになるように炊飯器をセットします。

こうして同じ条件の下で炊いたご飯を何人かの専門家が食べてみてランキングを決めるわけです。

 さて、この頃は美味しい米を作ろうという産地間の競争が激しくなりました。結果として高い評価が得られた米は、高く売ることが出来ますから、生産者や農協が一生懸命工夫をして、美味しい米を作って出荷しようとします。これ自体は大変結構なことですが、私は一方では注意すべき点もあるように考え始めています。

 一般の消費者も外食の経営者も、そんなに「特A」の米ばかりが欲しいわけではありません。味は不味くては困りますが、そこそこ美味しくて、値段も手頃なコメが欲しいという人が結構多いのですね。ところが、この頃そんな米が不足気味です。そして、美味しい米の競争に釣られてなのか、価格が全体に上がり気味です。

 さらにこのところ、主食用ではない餌用お米の生産も奨励されるようになって、普通の米の生産が足りなくなっています。これでは多様な米の供給を求める消費者の要望に応えることにはなりません。

 大切なのは米の適地適作です。その地域に一番合った米の生産に努めることが、生産調整が廃止された今、最も求められる姿のように思えるのです。

 

 

 NHKラジオ第一放送「日曜コラム」より