2018年11月2日  『わらまで輸入するコメの国日本』   

 先日ある農業関係の新聞を読んでいましたら、一つの記事が私の目を引きました。
それは、中国でアフリカ豚コレラが発生したので、日本政府が中国からの稲わらの輸入を一部停止した、という記事でした。
 「へえ、稲わらまで輸入なの?」 日本はコメの国で、わらなんていくらでもあるのに、と私は感じました。今回はここから話を始めます。

 中国から日本向けに輸出する稲わらの加工施設は80か所もあって、殆どが東北部の遼寧省と吉林省にあります。今年の9月以降、これらの省でアフリカ豚コレラが発生したので、感染を防ぐために、日本への稲わらの輸出を停止したというのです。
豚コレラは非常に感染力が強い病気ですから輸出停止は当然のことです。ただ、私が注目したのは日本でもコメ生産に伴って大量の稲わらが出てくるはずなのに、なぜ輸入してまで確保しなければならないのか、という点でした。

 稲わらの用途は、主に牛のえさ用や牛舎に敷くためです。農林水産省の資料によりますと、エサ用に輸入するわらや殻は、年間27~28万トンです。一方日本におけるコメの生産量は、およそ730万トンです。
当然、このコメ生産に伴って、食べるためには使われない稲わらが、コメを少し上回る量、出てくるはずです。この稲わらはどこに行ってしまうのでしょうか。

 現在、コメの収穫作業は、コンバインといって、刈り取りと脱穀を一緒にやってしまう大型の機械によって行われています。その機械が田んぼを走りまわりますから、作業の時間は大幅に短くて済みます。
しかし、稲わらは作業の過程で、細かく裁断されて田んぼの上にバラ撒かれてしまいます。わらとして使うといっても、またこれを回収することは不可能です。ここにわらまでも輸入する日本の農業事情がありました。

 えさとしての需要は、主に牛の飼育です。もともと牛は草食動物で、わらや草などの繊維質のえさを食べて反芻することで胃の働きを活発にする性質があります。よく肉牛に脂肪であるサシを入れるために、栄養価の高い穀物のえさを与えると言いますが、それだけでは十分ではなく、飼育の後半にはわらなどの繊維質が必要です。
 調べてみますと、今から18年前にも、わらの輸入が停まったことがありました。この時は、口蹄疫という家畜の病気の原因が中国からのわらだと疑われました。日本はわらの輸入を停止して、畜産農家の間では大騒ぎになりました。
 この時も、コメをほぼ完全に自給している日本で、何故稲わらが自給できないのか、との議論が起きました。しかし、今回はそんな疑問さえ起きません。コンバインの普及が当たり前になって、稲わらは収穫物には入らないことが定着したからでしょうか。
 食料の輸入が広い範囲で行われている日本ですが、稲わらまでもが海外依存とは、いささか驚きですね。